企業法務の基礎 Q&A | 第一法規株式会社

△ 株主総会の意義や株主総会の運営の基本姿勢について、解説してください。

△ 株主総会は、株主によって構成される会議体であって、会社の存在そのものや組織上重要な事項について決定する機関であり、また、取締役、監査役等の選任という会社の他の機関の構成員を決定する基本的かつ会社の最高の意思決定機関として位置づけられます。株主総会は会社の所有者である株主が出席する機関であることから、株主総会は株主のために行なわれるものであり、会社が株主の利益を最優先に考え、企業情報の開示を中心に適正かつ効果的に運営されるべきです。

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1 株主総会の意義

株主総会は会社の所有者である株主によって構成される株式会社の最高意思決定機関として位置付けられます。株主総会の種類は、定時株主総会と臨時株主総会に大別されます。定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならず(会社法296①)、臨時株主総会は必要がある場合には、いつでも招集することができます(会社法296②)。

2 株主重視の株主総会

株主総会を招集する方法としては、通常は取締役会において招集を決定し、代表取締役が株主総会の招集通知を発して開催されます(会社法298④、299)。通常の株主総会以外に、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を6カ月前から引き続き有する株主は、取締役に対して株主総会の招集を請求することにより、株主総会を開催することができます(会社法297①)。この場合に、株主の請求後遅滞なく招集の手続が行なわれないときは、株主総会の開催請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができます(会社法297④)。また、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主または発行済株式の100分の3以上の数の株式を有する株主が、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることにより(会社法358①)、裁判所による株主総会の招集命令により開催することも可能です(会社法359)。このように、株主総会は会社を所有する株主を重視した方法で開催されます。

3 株主総会のIR機能

IR(Investor Relations)は、株主・投資家との緊密なコミュニケーションを通じて企業そのものを株主や潜在的投資家に対してマーケティングする活動であり、企業全体の価値評価を通じて資金調達、株主数増加、株主構成の安定化、株式取引量の増大、適正な株価の維持などにつながる戦略的な事業活動です。加えて、企業の長期的な経営計画のうち資金計画の円滑な実施において重要な機能を果たすという意味で、極めて実質的かつ実務的な活動となります。
株主総会は、株主すなわち投資家に対する企業情報開示を中心としたIR活動の一環としての運営に重点が置かれることが、ますます重要になります。株主総会をIRの一環とするためには、できる限り多くの株主に必要な情報を適切に提供し、企業を理解してもらうことが重要です。
企業の最高意思決定機関として位置付けられている株主総会において、各企業では企業情報の積極的な開示など株主とのコミュニケーションを深める動きがますます進んでいます。既に法制化されたインターネットによる投票制度の実施や、インターネットを使用して株主総会の議事内容をリアルタイムで株主に伝えたり、事業報告を詳しく説明した年次報告書を株主総会に連動して株主に送付するなど、株主への情報開示に注力する企業が年々急速に増加しています。


【参考法令等】

会社法296(株主総会の招集)
会社法297(株主による招集の請求)
会社法298(株主総会の招集の決定)
会社法299(株主総会の招集の通知)
会社法358(業務の執行に関する検査役の選任)
会社法359(裁判所による株主総会招集等の決定)

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