ISBN |
978-4-474-02806-7 |
発刊年月日 |
2012-11-30
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判型 |
A5判 |
ページ数 |
320 |
巻数/略称 |
/ 政策法務講義 |
商品コード |
028068
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地方分権(地域主権)改革により、自治体は、自らの工夫と責任により法務行政を推進していかなければならない。そのための知恵を与えるのが「政策法務」である。この分野の第一人者である著者が、長年の研究成果の体系化を試みた本書は、著者初のテキストとして斯界注目の一冊となるものである。
はしがき
第1部政策法務の基礎
第1章政策法務という戦略─法律論と政策論の融合
1 政策法務とはなにか
2 いまなぜ政策法務か
3 政策法務の3つのプロセス
4 自治立法の種類と特質
5 政策法務論と関連諸学問の関係
6 政策法務は法治主義を軽視するものか
Column1 行政法学と行政学─役に立つのはどっち?
第2章政策法務の歩み─政策法務はどこまで進んだか
1 政策法務・40年の歴史?
2 秩序維持型法務の時代(1940年代後半~50年代)─政策法務の前史
3 環境保全型法務の時代(1960年代~70年代前半)─政策法務の創成期
4 住民参加型法務の時代(1970年代後半~80年代)─政策法務の展開期
5 分権推進型法務の時代(1990年代~現在)─政策法務の発展期
6 政策法務(実務)はどこまで進んだか
7 政策法務論(理論)はどこまで進んだか
Column2 3つの学派から戦国時代へ─法務研究会が増えている理由
第3章広がる条例の世界─ローカル・ルールを概観する
1 条例制定の概況
2 自治を支える条例の状況
3 分野別基本条例の状況
4 地域づくりを進める条例の状況
5 地域活性化を進める条例の状況
6 暮らしを支える条例の状況
7 法定外税に関する条例の状況
Column3 条例は政治家のアクセサリーか?
第4章自治を支える政策法務─デモクラシーの制度設計
1 自治を支える政策法務とは
2 住民自治をどう捉えるか
3 代表機関のあり方─二元代表制をどう生かすか
4 新しい住民自治の考え方
5 自治基本条例の制度設計
6 議会基本条例の制度設計
7 住民参加条例と住民投票
Column4 「ご近所の底力」は本物か?─丹沢の山小屋で条例案をつくった話
第2部政策的検討の理論
第5章政策分析の基礎─公共政策の見方・つくり方
1 政策とはなにか
2 政策分析の枠組み
3 政策形成の理論・モデルの全体像
4 政策の「内容」に関する理論─「すぐれた政策」とはなにか
5 政策の「過程」に関する理論─政策はどのように形成・実施されるか
Column5 公共政策は「坂の上の雲」か?
第6章条例評価と立法事実の理論─「すぐれた条例」とはなにか
1 なぜ条例評価か
2 条例評価の視点と基準
3 総合的評価の限界と可能性
4 立法事実の重要性
5 立法事実の収集と明確化
Column6 石橋を叩いてこわす自治体職員?
第7章政策手法の理論─「すぐれた条例」のつくり方
1 政策手法とはなにか
2 政策手法の類型
3 基本的な政策手法
4 補完的な政策手法
5 政策手法の選択
Column7 活躍できる?自治体職員出身の大学教員
第8章インセンティブの理論─市場・政府・地域社会の生かし方
1 なぜインセンティブか
2 市場の役割と限界
3 政府の役割と限界
4 地域社会の役割と限界
5 問題解決と条例制定の原則
Column8 あなたも嫌い?NPM改革
第3部法的検討の理論
第9章憲法と条例─人権保障という思想
1 法治主義の意義と再検討
2 基本的人権の保障の考え方
3 人権保障と条例の関係
4 違憲立法審査の基準と条例制定の可能性
5 法の一般原則
Column9 検事たちの「おかしな条例」
第10章分権改革の到達点─自治体の権限はどこまで拡大したか
1 第1次分権改革の要点
2 第1次分権改革による変化とその限界
3 三位一体の改革の失敗
4 第2期分権改革の課題と成果
5 更なる分権改革と政策法務の課題
Column10 「頭痛のノーシン」に悩む農政現場?
第11章条例制定権の限界─「適法な条例」とはなにか
1 条例制定権の3つの限界
2 対象事務の限界─当該自治体の事務に関するものであること
3 法律との関係による限界─法令に違反しないこと
4 判例にみる法律適合性の判断─上乗せ条例の場合
5 判例にみる法律適合性の判断─横出し条例の場合
6 法律に抵触しないための留意事項(まとめ)
7 条例と執行権の関係
Column11 もちつもたれつ?議会と執行部の関係
第12章分権時代の条例論─条例は国法を乗りこえられるか
1 自主条例の法律適合性─分権改革以前の議論
2 自主条例の法律適合性─分権改革以降の新しい議論
3 法定事務条例の可能性
4 都道府県条例と市町村条例の関係
5 法律の規律密度改革と条例の上書き権
Column12 変わるか?自治体の人事政策
第4部政策法務の実践
第13章立法法務の実践─ローカル・ルールをつくろう!
1 立法法務のプロセス
2 条例制定の課題設定
3 条例案の基本設計(立案1)
4 条例案の詳細設計(立案2)
5 住民参加と合意形成
6 条例の審議・決定
Column13 検察協議ってなに?
第14章執行法務の実践─法執行の実効性をどう高めるか
1 執行法務のプロセス
2 執行活動の理論
3 執行法務の制約条件
4 執行管理の実践
5 執行活動の実践
6 行政手続法制による規律
7 自治体の法令解釈権と関与への対応
Column14 規制行政はつらいよ!?
第15章争訟・評価法務の実践─自治体のアカウンタビリティ
1 争訟・評価法務とはなにか
2 不服審査法務の制度と実践
3 苦情対応・オンブズパーソンの実践
4 訴訟法務の制度
5 訴訟法務の実践と戦略─法的対話とアカウンタビリティ
6 評価法務の実践
7 政策法務のマネジメント
Column15 自治体法務検定という「ものさし」
参考文献
事項索引
▼もっと見る
★とかく「法律論」中心の政策法務に「政策論」的視点を加えました。
一種のブームとさえいわれている昨今の政策法務に関する書籍は、とかく「法律論」中心の記述が目立ち、いまひとつ自治体の実務に貢献できずにいました。本書は、「政策論」的視点からの検討を加えることにより、自治体がめざす自治の将来像を明確に示すことができ、ひいては住民福祉の充実に貢献できる内容となっています。
★実務家としてのセンスが本書の随所に現れています。
著者の17年間にわたる神奈川職員としての実務経験が、本書の随所に現れています。問題の解決にあたっては、机上の理屈だけでなく、実務という足元を見た分析を常に行っており、まさに自治体職員の目線からの解決策を提示しています。これは、著名な研究者の著作物にはない本書独自のものです。
★新しい提案が盛り込まれています。
教科書や体系書では、最新のテーマであっても、論議の最中であり評価が固まっていないものは取り上げない傾向が強くなっています。本書は、地域主権(地方分権)改革や条例による「上書き権」問題など、自治体の行く末を左右する新しい論点も積極的に取り上げており、いわば自治体法務の「最前線」に毅然と立っています。
★学生と自治体職員の両方を見て作ったテキストです。
本書は、大学で行政法や地方自治法を学ぶ学生さん、公務員試験を目指す学生さんに、自治体法務に関する体系的なテキストとして贈るものです。また同時に、自治体の現場で日々実務に携わる自治体職員の皆さんに、実務の拠り所としてのテキスト(研修テキストとしてもぴったりです)として贈るものです。本書は、地方自治に関心のある幅広い読者の皆さんが、まさに“オールマイティ”なテキストとして利用できます。