成長社会から縮減社会へ――日本の地方分権と政策法務の歩みを歴史的・立体的に理解できる
3,960円 (本体:3,600円)
ISBN |
978-4-474-09113-9 |
発刊年月日 |
2023-01-23
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判型 |
A5判/C2032 |
ページ数 |
484 |
巻数/略称 |
/分権条例 |
商品コード |
091132
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地方分権と条例に関する論文集。分権改革の系譜をたどるほか、今後の課題等について、特に自治体の自主立法である条例の観点から、縮減時代の土地利用管理(開発規制)やコロナ対策など具体的な政策課題を素材として解説。自治体職員が、法に定められた国と地方の関係性や役割に留意しながらも、地域独自の政策形成や条例制定を行う上で参考となる一冊。
まえがき
第1部 分権改革と条例
第1章 地方自治の展開─憲法の75年、分権の30年
はじめに
1 中央地方関係を評価する枠組み
2 地方自治75年の展開(概観)
3 地方分権改革の要点と効果
4 分権改革以降の中央地方関係
第2章 第1次分権改革と中央地方関係の変容─「通達行政」は変わったか
はじめに
1 第1次分権改革の内容
2 主な機関委任事務の法令・通達等の変化
3 関与のルール・係争処理の状況
4 第1次分権改革の波及効果
5 第1次分権改革の効果をめぐる議論─中央地方関係を変えたか
まとめ
第3章 第2期分権改革の成果と自治立法権─義務付け・枠付けの見直しは成功したか
はじめに
1 第2期分権改革の概要と成果
2 自治体への権限移譲の成果と限界
3 義務付け・枠付けの見直しとその方法論
4 義務付け・枠付けの見直しの成果と自治体の対応
5 法定計画による「柔らかな統制」とその見直し
第4章 法令の過剰過密と立法分権の可能性 ─分権改革・第3ステージに向けて
1 地方分権の類型─行政分権か立法分権か
2 分権改革30年の到達点─行政分権か立法分権か
3 法令の過剰過密とその効果
4 分権改革の成果活用とさらなる分権改革の必要性
5 立法分権の可能性─「分権改革・第3ステージ」の展望
第5章 地方創生施策の展開と地方分権─「目標管理型統制システム」の有効性
1 地方創生6年を振り返る
2 これまでの地域振興政策は成功したか
3 地方創生施策の枠組みとその特徴
4 第1期地方創生の成果と第2期地方創生の課題
5 地域振興政策の比較検討と地方創生施策の特徴
6 地域振興政策としての地方創生施策の評価
7 地方分権からみた地方創生施策の評価
第6章 新型コロナ対策と中央地方関係─危機に強いのは集権か分権か
はじめに
1 コロナ対応をめぐる国と自治体の役割分担
2 過去3年のコロナ対応(感染対策・経済対策)の経過
3 新型インフルエンザ等特措法の仕組みと課題─「日本モデル」の功罪
4 新型インフルエンザ等特措法等の改正
5 国のコロナ対策は成功したか
6 都道府県・市町村は住民の期待に応えたか
7 今後の中央地方関係のあり方
第2部 政策法務と条例
第7章 政策法務の挑戦─実践の60年、理論の30年
1 政策法務とは何か
2 政策法務の実践の変遷
3 政策法務の理論の変遷
4 これからの政策法務の課題
第8章 自治立法の意義と政策法務の課題─現代的法治主義は可能か
はじめに
1 国法と自治立法の状況
2 法システムの変容と自治立法
3 自治立法の特質と機能
4 現代的法治主義の可能性
5 自治立法と政策法務の課題
第9章 自主条例の法律適合性判断─判例・学説の整理と新たな解釈論
はじめに─立法分権の必要性
1 自治体の立法権の制度的位置─上下関係から並立関係へ
2 自主条例の法律適合性に関する判例の状況
3 自主条例の法律適合性に関する学説の状況
4 具体的事例の検討─判決例を題材として
第10章 法定事務条例の法律適合性判断─判例・学説の整理と新たな解釈論
1 法定事務条例とは何か─「法令と条例のベストミックス」をめざす
2 委任条例の法律適合性の基準
3 執行条例の法律適合性に関する判例の状況
4 執行条例の法律適合性に関する学説の状況
5 執行条例の法律適合性に関する私見
6 具体的な執行条例の検討
第11章 条例制定権拡充のための立法論─立法権の分担原則をどう具体化するか
1 条例制定権に関する立法論の意義
2 現行法における条例制定権の位置付け
3 法令(個別法)の統合・簡素化(スリム化)
4 条例制定権拡充のための憲法・法律の改正
5 条例の上書き権の制度化
第12章 条例の制定過程と政策法務─神奈川県の土地利用関係条例を題材として
はじめに
1 条例制定過程の概観
2 条例制定の事例分析―神奈川県における2つの条例制定の過程
3 条例制定過程の分析
4 条例制定のシステム整備と政策法務
【補論】神奈川県受動喫煙防止条例の制定過程
第3部 土地利用と条例
第13章 土地利用法制の変遷─法律の70年、条例の50年
はじめに
1 個別的開発規制の時代(1950~67年)
2 総合的開発規制の時代(1968~79年)
3 規制緩和・リゾート開発の時代(1980~89年)
4 参加型まちづくり・地方分権の時代(1990~2009年)
5 縮減型利用管理の時代(2010年~現在)
6 土地利用法制度の変容(まとめ)
第14章 土地利用規制法と分権改革─法令解釈権は拡大したか
はじめに
1 土地利用規制法の概要
2 土地利用規制法における第1次分権改革の概要
3 各規制法における第1次分権改革の内容と影響
4 第2期分権改革等における土地利用規制法の分権化
おわりに─さらなる分権改革へ
第15章 土地利用規制条例と分権改革─自治立法権は拡大したか
はじめに
1 市町村の土地利用に関する条例の状況
2 都道府県の土地利用に関する条例の状況
3 土地利用の条例制定権の限界─分権改革による変化
4 自主条例の法律適合性判断─主な個別法との関係
5 法定事務条例の法律適合性判断─主な個別法ごとの検討
おわりに
第16章 神奈川県土地利用調整条例の制定と運用─行政指導の「法制度化」は何をもたらしたか
はじめに
1 土地利用調整システムの危機
2 土地利用調整条例の制定過程
3 土地利用調整条例の運用状況
4 土地利用調整条例制定の効果
5 人口減少時代の土地利用調整システム
第17章 人口減少と土地利用法システムの変容─行為規制から空間管理へ
はじめに
1 人口増加時代の土地利用法システム─「1969年体制」の特質
2 中心市街地の空洞化に対する法制度─「コンパクトシティ論」の登場
3 立地適正化計画と地域公共交通網形成計画─「2014年体制」の実効性
4 放置される土地・建物への対策─空家対策特措法・所有者不明土地法・森林経営管理法
5 土地利用法システムの変容─行為規制から空間管理へ
補章 許認可行政と自治体─機関委任事務体制における都道府県の裁量
はじめに
1 許認可行政とは─検討の対象と分析の枠組み
2 許認可行政における都道府県の裁量
3 都道府県の裁量と主体性
4 許認可行政における市町村の役割
5 許認可行政の転換と都道府県の課題
あとがき
参考文献
索引
▼もっと見る
〇日本公共政策学会2024年度作品賞受賞(※作品賞は、公共政策研究分野を代表する著書を対象とする。学界をリードしてきた研究者による集大成的業績を想定した賞です(学会賞推薦書の記載より))
〇自治体学会2023年度研究論文賞 受賞
〇各章の論考を読み進める中で、地方分権改革の経過とその影響を立体的に理解できる。
〇地方分権、政策法務、土地利用という3 つの側面から描くことによって、日本の地方自治がどう発展してきたか、また成長時代から縮減時代への転換によって日本の法システムと中央地方関係がどう変わりつつあるかを提示する。読者は時間軸の中でそれぞれの問題を考えることができる。
〇地方分権と条例というテーマについて、法律論と政策論の両面からアプローチするとともに、理論と実務の架け橋となるような考察が得られる。法律論や政策論だけでなく、両面をバランスよく検討することで、読者がその後の実務に反映できるように分析
〇1993年、衆参両議院の「地方分権の推進に関する決議」から始まった日本の分権改革。それから30年、なお第2期分権改革が継続されている。この世紀をまたがって展開された分権改革は、日本の政治行政のどこを変え、どこを変えられなかったのか?これによって条例というローカル・ルールの可能性はどう広がったのか?
〇『地方分権』のこれまでの歩みと課題について、自治体の自主立法である条例との関係から理解できる。
〇「第1部 分権改革と条例」では分権改革の系譜をたどったうえで、分権改革の波及効果を確認、「第2部 政策法務と条例」では政策法務の実践と理論を再確認し、今後の地方分権の可能性を探る。さらに、「第3 部 土地利用と条例」では、分権改革の成果が具体的に表れている土地利用分野について多面的・総合的に検討。